災い

「嘘を付くと、舌を抜かれるんだよ?」



そう笑った青年には、見覚えがあった。



あれはまだ私が学生だった頃、教室で一際存在感を放っていた彼。
いやそれは私の記憶違いかもしれない…
白く透き通るような肌は、うだるような残暑の中でもひどく涼しげで
私はよく、瞳を奪われていたように思う。

しかし彼とは、それといった接点は無く
進学して私がこの町を離れてからは会う事も無くなった。
都会の忙しさにかまけている間に時は無情に過ぎ
彼の記憶もおぼろげなものになっていた。

今日帰省しなければ、
彼が卒業後すぐ亡くなった事も知らないままだっただろう。


盆の夜、祭囃子に誘われ薄暗いあぜ道を辿っていると
面を被った青年が現れた。
……それが彼と気付くのにあまり時間はかからなかった。

私が彼に付いた嘘が何か覚えは無いが
彼がそれを罰するという行為にかすかな期待を感じる自分が居る。

うだるような、風も無い夜に
冷ややかな視線が妙に心地よかった。

絵の文字の訳は「口は災いのもと」です 多分
身も心も冷たい青年といちゃいちゃしたいよ…