催眠術なんて信じない!!発売とお詫び
2019.07.14

締切と締切がコンボだドン!してしまい、
結局発売日に間に合いませんでしたが6/27竹書房さまより
コミックス「催眠術なんて信じない!!」が発売されました。




竹書房(特約店情報など):https://bl.takeshobo.co.jp/info_reijin/5330/
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/480196656X

説明文にもあるとおり、2作品収録。…なのですが、
表題の「催眠術…」に関してはコミックスのページ数を埋めるために描いているので
実質本編+後日談のような感じです。
というかメインは元々「土中の繭」で、タイトルが急遽変更になってしまった関係で、
描き下ろし短編も「土中の繭」のものが収録された状態となっています。
ページ数にすると表題は3分の1くらいかな。


で、そもそもなんでこんな形になったかというといつもの企業側NGですよ旦那ァ…
「添い寝ラヴァーズ」の時もそうだったのですが、
どうも竹書房さんは雑誌は作家側にエロを求める割に指定が絡むムーブを嫌うようで、
今回はその「土中の繭」の出版がソレに当たったわけです。

具体的に言うと子供(学生)と大人のエロシーンが該当するとのこと。
そもそも年齢にかかわらず結合シーンがある時点でアダルトコンテンツだろという
当然のツッコミはさておいて、個人的には○学生とは明記せず、
高校生として押し通せる体裁でならイケる…!との
「麗人」編集部判断だったのですが、竹書房営業部のOKがどうしても通らず
2週間ほどゴネたり暴れたりしてみたものの発売中止も匂わせられ、
結果的に私が折れる形となった次第です。

どうしてそこまで私がゴネる事になったかというと、その、「土中の繭」の内容ですね…。
巷やレビューではサイコホラーやサイコサスペンスなんて言われているそうなんですが
私自身、結構人を選ぶと言う自覚があったんですよ。
勿論コミックスを読んで、全然平気!という方もいらっしゃると思いますが
まあ無理な方は本当に無理な内容かなあとは思っていました。

それ自体は仕方ないと言うか趣向の問題なので、イノセントの件と同様、
私は「欲しい人の手に届けばそれでいい」という考えなので、批判はどんと来い!と
高をくくっていられるのですが、表題が「催眠術…」になると話は違ってくるんです。
この話、めっちゃライトなオッサン受けコメディなんですよね。

例えば、ある動物園に蛇好きの飼育員が居るとするじゃないですか。
蛇の魅力を共有したい、蛇好きのお客さんにも楽しんでもらいたい、そう思って
上司の了解を貰い、園内に「ふれあいヘビ広場」を作ったとします。
では、誰かが看板に書かれた「ヘビ」の表記を消してしまったらどうなるでしょうか?

お客さんの中には蛇が苦手な人も居るし、見たくない人だっています。
だからこそ飼育員は広場の入り口に大きく「ヘビ」という文言を加えていたのに
何も知らないお客さんはウサギや子犬がいると思って入った草むらで蛇を踏むのです。

私が頑なに表題を「土中の繭」にしようとした理由も同じです。
そして、想像したとおり、蛇を踏んでしまった読者の方から
「表題が逆なら買わなかった」「騙された気分」といったコメントをいただいております。
至極まっとうなご意見だと思います。
それくらいこの作品は注意が必要な作品だったという事です。
勿論褒めてくださった方も大勢いらっしゃいます。
でも私は作品の批評とは関係なく「本来置くべきだった看板を置けなかった」事が
大変悔しかったですし、驚かれた読者さんには、大変不甲斐なく、
申し訳ない事をしたな、という思いでいっぱいです。

情けない話ですが、
私は生まれた環境や社会人生活が長かった関係で漫画やBLを読む習慣が無いまま
サイト用に10年漫画を描いていたため、商業も同人もほぼ関わることがなく、
一般的にどの程度OKか、どのラインが駄目かを掴むのに今も大変難儀している状態です。
(恐らく自由に描かせると思いっきりその枠から逸脱する可能性が高い)

だからこそ、編集さんにはプロット段階でキャラクターの立ち絵やバストアップを提出し、
規制等の問題が無いか出版社サイドの判断を毎回仰いでいます。
当然「土中の繭」もその流れで普通に雑誌掲載し、普通に書店に置かれ、
コミックス化の段になって初めてNGを受けました。

正直とても驚いたし、なぜ雑誌の考査は通ったのか、
なぜ収録内容を替えたわけでもないのに表題を替えたらOKになるのか不思議でした。
そしてその疑問は、「そういうもの」として最後まで説明されることはありませんでした。
ただ社内の判断基準が明瞭化されていないということが原因の一端にあるようには思います。

身も蓋もない話ですが、私は、自分が描くものも含め、
世に出ているBLの大半はアダルトカテゴリだと思っています。
ただ、女性向けコミックスのR指定は商業として市場がかなり狭まってしまうコンテンツで、
現状では特例的に一般向けとしての販売が許されている状態だと思います。

それに関する思いや考えはあれど、商業作家である以上、
ある程度の判断は出版社に委ねなければいけない部分もあると承知しています。

しかし「土中の繭」は特出してエロメインでもなく、
個人的にはサスペンスやミステリに該当し、
伏線や心情効果等色々と悩みながら真面目に描いた作品です。

それでも企業としてNGが出る可能性があったのなら
プロットの段階でNOをいただきたかったし、
そうすることが作家や読者に対して無責任な状態も防げたような気がします。

編集長には今後はこのようなことは無いようにする、とお約束いただいたのですが、
私個人としても二度とこんな形で本を出す気はないです。
やっぱり稚拙ではあれど自信を持って描いた作品を「臭いものに蓋」するように
扱われるのは傷つくし、単純にこういう商売の仕方は嫌いです。
長くお付き合いした出版社さんだし、編集さんにもとても仲良くさせていただいてはいますが
対会社の合う合わないは仕方ないと思います。

マイナー趣向の作家だからこそ、作品に共感してくださる方を大事にしていきたいし、
そうじゃない方を傷つける事も無いよう出来る範囲で配慮したいと思っています。
ものを描いて売る以上、最低限の心構えだと思うのです。

何を言ったところで、読者さんにとってそのようなやりとりは無関係だし、
結果的にこのような形で本を出さざるを得なかった私自身にも責任はあります。

今回「催眠術なんて信じない!!」をご購入されて、
作品の内容について不快に感じられた方、驚いてしまった方、怖い思いをした方、
本当に申し訳ありませんでした。
私自身、まだまだ作家として未熟な部分も多いですが、
読者の方には、出来る限りご迷惑をお掛けすることがないよう、
また、純粋に作品を楽しんでいただけるよう今後努めてまいります。

何卒よろしくおねがいいたします。

(次回からはまたアホなブログに戻ります。)

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